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 解らぬのは死ぬと云う事に思える。
 亡霊は姉貴に抱かれて死んだとの事だが其は本人の謂で本当だか如何だか我輩の知る所ではない。彼の先生やら村上某もまして里佳子というのもよく理解せずに居る。
 我輩としては矢鱈と煙草は喫うし酒を飲んでは下手っぴな歌のようなものを発するが、姉貴が好きであるから其れだけで好いのではある、然し亡霊の話には矢張り何処とは知れぬが何か学習する所だ。

 「おい、ジョルジュ!いるのか?」
 またも不躾ではあるがマルの訪問である。
 「やあ、マル君。今日も御馳走に与かったかい?」
 「ふん、手前が良い物食ってるからって間抜けな挨拶をするんじゃねえ、今日はな、自転車屋のシロを散々遣っ付けてやった」
 マルの話によると我輩は未だ行かぬ坂の途中にある自転車屋、そこには同族の成す家族が居りシロというのはその母上の勢力をよい事に偉そうにして目障りなのだそうだ。
 「しかし、君の寝床や食事を強奪した様では無いし、偉そうというだけでかい?」
 「偉そうにされたらそりゃ業腹さ。まして母親の力迄借りようってのは片腹痛い」