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 亡霊の肩代わりとは随分な言い草だ。余程に彼は里佳子さんこと姉貴に愛着があるのであろう。一緒に暮らそうとなった途端に亡霊になってしまったのが残念なのは解るが、今姉貴が一緒に暮らしているのは我輩であり愛されておるのも我輩だ。
 「ハハ、君の気を悪くしてしまってここは謝っておく。確かに僕は亡霊だ。然し里佳子さんは猫族の気持ちを理解出来る人さ。神社の虎さんも、その前に居ったグレイさんも里佳子さんと通じていた。君はどうだい?」
 「通じるとかはよく解らんが姉貴は我輩を愛しておられる様に思うからそれで充分さ」
 で、あるならば、と亡霊は言う。
 「かの女の趣味など寛容に受け止めておけばいいじゃないか。君が里佳子さんをどういう人間だと考えているかは勝手だが少々我が儘ではないかい?やたらと批判的だ」
 批判的であるかも知れぬが我輩は姉貴に選ばれて此処に居るのであるから批判の一つもしてよかろう。然し我輩がかの女に関して批判的となったのは凡そ外界に於いて姉貴が異質であると知らされたからであって、其なければ批判などせぬであったと思う。