叔父の本棚で出会った彼

 昔、母親から「アンタの読む本は頭が悪そうなんばっかりや」と言ってあまり本を買って貰えなかった。主にわたしは『SFジュブナイル』のシリーズを集めていた。キッカケは勿論「時をかける少女」なんですけど。アレに入っていた他2編の短編もすごく面白かった。その海外版には「遊星Xの恐怖」もあったと思う。あれはコワかったけど、とにかくSFが好きだった。それをして「頭が悪そう」とは…小学校の図書館でもよく借りて読んだけれど、母の弟たる叔父がインテリだという噂なので、よく叔父の部屋に行って本棚を見た。SFはなかったけどE.A.ポーの短編集が割と怖いけど美しいのでよく読んだ。その流れでH.P.ラブクラフトにも行くのだけれどこれはもう少し後の話。
 で、そこにあったのが三島由紀夫の短編集だった。始めは「しんきくさいな」と思ったこれ(右画像)に入っていた「詩をかく少年」というのが特にダサくてイラッときましたね。今でいう厨2病(あぁまさしく)クサくって…でも今にして思えば小5あたりでロクな読解力もないわたしが何をエラそうに…なのですが。
 それから中学生になってから大江健三郎に出会い、夢中になりました。あの人の著書はティーネイジャーがいかにも夢中になりやすい面白さがあって‥しかし昭和天皇ご崩御の時に新右翼の人達の談話が新聞(当時ウチでとってたのは朝日だったけど)で特集されていて、カルチャーショックを受けました。そのへんの話はまた今度にするとして、改めて三島を読むと、その絶望的なナルシシズム、というかその絶望的すぎる「予め失われた美」というのにショックを受けました。そこで彼は自らの為に自らの神話ともいえる「豊穣の海」を書いたのだと思うと、そしてそれが壮大な遺書でもあるという事を考えるとゾッとしました。命懸けの美学。それはしかし自己愛異常ともいえるのですが‥45で逝った三島より歳をとったわたしは自分に於ける物語が今後創れるだろうかと疑問。
その辺のことを凄く解り易く語られているのはこの番組。

 NHKグッジョブ。
 それはいいけど三島の写真集『薔薇葬』の悪趣味な装丁をしたあの横尾が、この中で一番適切な事を語っていたように思う。