カセットテープというメディア

 5年程前だったと思うけど、近所のレコード屋(正しくはCD&音楽カセット屋)にカセットテープを買いに行ったところ店主さんに「カセットはココにあるんが最後やデ。」と言われた。その店に於いての在庫がそれのみで新入荷の予定はないなぁという話だったのでちょっとビックリした。その店のメインで扱っている音楽ジャンルは演歌とか歌謡曲だったので、そういう音楽を好む方は必ず(多分ね)カラオケも好きだしそしてそれを録音する事が多い。何の為かというと学習の為らしい。これは父方の末っ子叔父(遊び人)のカノジョさん(カラオケマニア)が言っていたから、まぁ嘘ではないと思う。ちなみにそのカラオケマニアの叔父's カノジョもだけどこういう古式ゆかしきカラオケ好きの熟年男女はカラオケボックスではなく概ねカラオケスナックという所でその喉を披露している事が多い。スナックといいつつ昼間っからやっている店が殆どで、そういう店はウチ近所の商店街にも多く存在していて午前11時頃から歌声‥というかエコーのかかった謎めいた声が聞こえてくる事も多い。カラオケスナックでは何故かお客さんのマイクの音量が大きい。そしてカラオケ抜きの歌声というのはあまり音楽的でないのが面白い。中原昌也=暴力温泉芸者のトラックと似ていない事もない。わたしは個人的に暴力温泉芸者が好きなので「面白いなぁ」と思うけど、他の通りがかりオーディエンスにとってどうかは解らない。でも、まぁ楽しそうな事は確か。
 で、このカセット=学習用に録音、というのはカラオケマニアの方々の中でのみならず語学や音楽のシーンでもあるわけで‥わたしが20年位前に某ジャズピアニストにジャズピアノを習っていた時もあったし6年前位に中国語の勉強をしていた時にもあった。だとしたら今でもある所にはあるんじゃないだろうか‥
 それは兎も角、マイ若い頃は音楽といえば「レコード」と「カセット」だった。40年前あたりに中学・放送部に在籍していたから間違ってないと思う。「オープンリール」は終わってた。当時はラジオをエアチェックするのが逐一高いレコードを買えない子女には普通だったように思う。わたしは日曜の午前にやっていた野村ナントカさん(有名な人なんだが失念)によるショパンの番組をマメにチェックしていた。"割愛"という言葉を知ったのも野村さんによってだった。
 そうする内にラブロマンスのお年頃になってから「好きな曲をダビングしたカセットをプレゼントする」というのが出てきました。わたしはあんまり自分の趣味に自信がなかったのでこちらから〜はあまりなかったのですが、'82年頃『ハラハラ大集会』という反日武装戦線・狼の人々を支援するビックリするような集会に出るバンドに参加する事になって。キーボードと作曲ですが、後、獄中メッセージ(大道寺さんの?)を読むというのもやりました。他の出演者では花柳幻舟がいたように思う。で、そのわたしが参加していたバンドのギタリストの方がカッコ良かった!あえて言うなら舘ひろし似!パンクな出で立ちでしたが気さくで練習の後とかよくファーストキッチンに行った。梅田のファイブの向かいの。で「Mさん(彼の苗字)はやっぱり思想的に?」と尋ねた所「僕は‥ラスタファリズムかな。I&Iっていう思想は素晴らしいと思うなぁ‥I&YouではなくてI&I。それは相手の事も一人のIだって認める事だから」との事。うわぁ!って思いました。実際「反日武装戦線・狼」の思想もよく解っちゃいなかったわたしですが"こっちの方がカッコイイ"と思いましたの。ゆうかイイ思想ですよね。それでその集会が終わってから絵のモデルになってもらったりの後「わたしがMさんの事好きだと迷惑ですか?」とCALLしたら「別に」との事だったので手紙と一緒にカセットテープを送りました。中身はBuzzcocksの"Singles going steady"というアルバム。よく考えてみればヘンなチョイスかもですがラブソングとして秀逸だとその時は思いました。

 結果、Mさんとはお付き合いするようになったのですが、当時でいうNewWaveとかの新譜や古いのでもわたしが絶対に好きになる音楽をマメにダビングしてくれました。12年ほどそのお付き合いは続いたのですが本当にイイ人でした。でも、ラスタファリズムに関しては「そういう考え方もあるって事」だとあんまりそっちの人ではありませんでした。わたしもあんまりレゲエとかアフリカン音楽に関心はなかったのでよかったけど。付き合いだして何年かの頃、2人で貸レコード屋に行った時!そこにファンカデリックの"Uncle Jam Wants You"があったので大喜びでカレに「コレいいよ!借りよ!ダビングして!」とそのレコードを差し出すと「うわっ!ベッタベタやなぁ〜こんなん好きなん!?悪趣味や!」と言ったのでちょっとムカッときました。でもその後年パーラメントの一種のブームみたいになった時「カッコいい」というので「ファンカデリックを悪趣味やと言うといて」と返すと「それは時代や‥」やって。