村上龍『55才からのハローライフ』/55才かなぁ?

 昨日猫ジョルジュの事でお世話になった警備員さんのちょっと高齢であった事から、この本を思い出した。1月にブコフで購入した短編集(文庫)。カヴァ裏のメモを読むと痛そうな話ばっかかなぁ‥と思ったけどわたしとて52才!まぁ読んでみようか、と。
 基本、村上龍は昔から好き。中学生の時に『限りなく透明に近いブルー』を読んだ時はあんまりイイと思わなかったのですが、2作目の『海の向こうで戦争が始まる』にはビックリでした!それまでに読んでいた国内作家のどんな作品とも違っていて…かといって海外の誰にも例えられない独特な展開。そして『コインロッカー・ベイビーズ』も衝撃でした。後、殆ど読んでいますが、何ともいえない非現実的な、しかしリアリティーは独特だと思います。途中からスティーヴン・キングを読むようになってそっちに傾倒しながらも"…村上龍もアメリカで書いてたらもっと売れたかもな"なんて思ったり。まぁ、心配せんでも龍さんは売れていますが。エッセイは読んでないけど『すべての男は消耗品である』はちょっとイイ事言ってるなぁとは思った。
 さて、この『55才からのハローライフ』、殆どがリストラとか早期退職とかで「困った」人達の話なのですが読んでいると「コレは‥バブル期によく働いて儲けた人なのではないか」という感じが随所にあって「これは60代の話では」と思いました。と、いうのも割と世間知らずなのです、主人公さんたち。イマドキの50代或いは55才ってこんなにオッチョコチョイではないでしょう!村上龍が1952生まれの63才ですから感覚がズレているのかも?‥執筆時期が今からちょっと前だとしてもこれは55才のリアルではないなぁと思いました。まぁ、面白かったですけどね。
 で、この短編集の中でイイ話だったのが「空を飛ぶ夢…」というの。ある意味中でも最も困った人が主人公なのですが、ファンタジーと言ってもいい位にイイ話でした。この話の主人公がしているバイトというか派遣が警備員。もともと小説家志望で出版社に勤めていたのだけれどリストラされてしまい、仕事を探すも派遣の警備員。腰を傷めてて辛いのだけど行かなきゃ立ちいかないという。奥さん、パートを切られたり。で、ホームレスに恐怖感を抱いている‥そんなある日…という話。
 ちなみにさっき調べるとコレ『55才からのハローライフ』去年NHKでドラマ化されていた。そこでこの「空を飛ぶ夢…」の動画をググッてみたらPANDORAにあったので観ましたが、いい出来でした。でも主人公がやはりイッセー尾形(63才)。55才の俳優さんって解らないけど、やっぱこの話ってこういう絵だよなぁって思った。しかし…もしかして55才と63才にはさしたる差がないんだろうか?若しかして世間知らずはわたしの方?もう社会人というか世間に出て仕事をしなくなって3年も経っている。でも去年だか元の職場の要請でイラストを頼まれて出て行った所、もうなんだか劣化している事を痛感して「おっしゃ!今後は厨房や」と考えましたし、わたしは特に自分の職歴とかに拘りがないというか…父が喜ぶから、というだけでデザインや企画の職場に入って行ったような所がある。だいたい楽しかったのはバイトで厨房だったり接客だった。だからまぁこの本に出て来る人たちのような「拘り」がないのかもしれない。その辺で部外漢かもしれない。っていうか漢じゃないし家族を養うとかナイし…立ち位置が違い過ぎるのかな‥