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 「あの妹君はまぁ更年期障害か何かの口だろうから悪気はないだらう。只、里佳子さんへの嫉みもあって偉そうに云うのさ」
 「嫉みとは一体何に嫉んで居られるのかよく解らぬ」
 「そうだね、かの女がやってのけたいような事が里佳子さんにしか出来ないからじゃないかな」
 姉貴に出来て妹君に出来ぬ事などあるのであらうか?村上某と不埒な付き合ひをする事は、どうやら妹君にはなささうだがいつそ潔癖に思える。或いは姉貴が職を与えた事にしても感謝こそすれ嫉みはせぬ筈だ。
 「だから今君が言った事を逆に妹君には出来ないだろう?そういう事さ」

 姉貴は100人中90人から嫌われ、恩知らづの妹君からは偉そうに言われ母君からは部屋の混沌を糾弾される。父君とは喋らぬが我輩は彼からかの女の自慢を散々と聞いて居る。
 こうなっては父君のみが姉貴の絶大なる信奉者かのやうだが、かの女御本人の気持ちの様なものはよく解らぬ。