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我輩としては姉貴と平和に暮らすのが何よりだと思ってをり、喧嘩するのが楽しいと云うのは一向に解せぬ所だ。例えマルが不幸な生い立ちであろうとも何かを恨んで喧嘩ばかりでは楽しくなかろう。況してや姉貴が何かを悔やんだり恨んだりする理由が思い付かぬ。父君には愛されて居るし母君の嫌味など聞いてもおらぬ様子だ。ただ変な出で立ちが容認されて居る所は如何な物かと思うが。
 自称男前のアニキはよう解らんが怪談を自慢するのは須磨子さんとやらの受け売りかとも考える。だいたい実際に亡霊と会ってゐる我輩が彼の怪談を読み違うや矢鱈に唯物野郎と非難するのはおかしな話だ。
 「まぁそれは各々其々だよ。君がどうこう出来る事ではないさ。里佳子さんと平和に暮らせる君が幸せなだけで」
 「では姉貴は幸せではないのかい?」
 またしてもタブレットという板を持って現れた亡霊に我輩は尋ねた。まるで我輩だけが幸せで姉貴は幸せではないような言い分ではないか。
 「里佳子さんは幸せだよ?僕の肩代わりの君がかの女と一緒に居て幸せである事も承知しているさ。ネットで猫嫌いに喧嘩を売るのは、まぁ趣味とでも思っておく事だね」