テネシー・ウィリアムズ『呪い』でどんより

 未だ夢見がちだった学生時代に読んだからか「いいなぁ」と思っていたT.ウィリアムズの短編集ですが、ウン十年たって読むと感想が全く違いました。文体の詩的さは美しいのですが、概ね「イタイ」のです、主題が。
 社会に不適合な主人公たち‥今、学生時代と違って自分もいろいろ病気したりで遂に失業保険で食べている立場になると、文体の美しさより内容の悲惨さのほうがリアルでイタイのでした。特に表題作なんて、夜中に布団の上で丸まって寝てるマイ・猫をおこさないように読んでいるわたしとしては辛かったし、他の作品も詩的ではあるけど暗い気分 or はぁ〜な気分。なんでこの短編集が好きだったのか?ってよく解らない。文体の美しさかなぁ‥どうも私小説っぽい短編に出てくる若者は詩人を目指しているから共感したのかもしれないですが‥イイ年になってしまうとちょいイタイ。
 唯一「欲望と黒人マッサージ師」という短編は、それこそ主人公がマッサージサロンで感じたようなゆったり気分が感じられました。ただこの一編は毀誉褒貶が激しいみたいですがわたしとしてはお気に入りです。
 特に趣味のない主人公のサラリーマンは映画館で職後過ごすのが趣味だったのが、ある時サウナ+マッサージの地下へとふらふらと入って行き、サウナの温気で朦朧とするわ..etc,etc....取りあえずアレな内容だし主人公は殺されるけど幸せそうなのでいいんじゃないかなって思います。「呪い」よりははるかにいいです。あと原題の"OneArm"「片腕」からも感じたけど、女嫌い?敢て趣味は問いませんが彼の時代にはカミングアウトし難かったのかなぁとも。ただお姉さんのことは「ガラスの動物園」とかよく出てきますが‥これが痛い‥というか作者ご本人にとっても心痛な思い出のようです。