囚われている

 あれは確か4月の半ば頃だったと思うのですが、通勤中、特急電車が20分ほど停車したことがありました。
 ただでさえ一人で電車、それも特急に乗るのが苦痛な私はとりあえず目を閉じていたのですが、横にいた誰かが「こんだけ時間かかる言うたら人身事故やな、車とちゃうで」「特急に飛び込む言うたら××駅の近くにある小さい踏み切りやろな」等々...
 その段階でもう電車から降りてどこか別の場所に歩いて行きたかったのですがドアは閉まったまま。

 そしてウワサの「××駅の近くの小さい踏み切り」を通過するとき、その"喋っている人たち(若しかしたら独り言?)"は「ああ、やっぱり人身事故やな、救急隊がバケツもってうろうろしとった」

 投身自殺。バケツで運ばれる死体。
 もしそれが私だったとして、それが私だと誰かに解るだろうか?そこまでバラバラになるんだろうか...
着てるもの?ボロだ。でもボロだけど年中似たのを着まわしている、それを誰かが気付いてくれるだろうか?

 それに気付いた誰かは、木っ端微塵になった私をどう思うだろう‥そう思うとボロボロ涙が出た。
 そんな惨めなことはいやだ‥
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 それ以来、その踏み切りを走り抜ける特急に乗れなくなった。
 でも、たまに上司と大阪から神戸に営業しに行くときは乗れていた。今日までは。
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 でも今日は駄目だった。
 予め上司に「特急が無理」と告げ、早めに準備し、各停で神戸に出た。
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 そして営業(プレゼン)が終わったあと、マイ上司は「今日はもういいから病院に行ってさ‥来週には元気に出てきてよ」。
 親切心は嬉しいけどヒトコト多い。