猫の可愛さ/伊丹十三のエッセイ

 私が10代前半に読んだ本はいろいろありますが、その中で私に一番影響を及ぼしたのは故・伊丹十三氏のエッセイです。大概の男性‥特に伊丹氏と同年代の男性は「嫌味なくらいにキザな奴!」という反感を抱くようす。現にマイ父も昔ワルグチを言っていました。でもマイ父の場合は本人もナルなのでヤッカミ半分の近親憎悪という感じも(実際私が伊丹十三のエッセイに出会ったのは父親がその第一弾『ヨーロッパ退屈日記を持っていたからですし)。しかし伊丹氏は絵も上手ければ文章も上手いのでその「キザ」な部分が中学生時分の私には本当にストレートに「徹底した美意識」と映りました。そして「オトナはかくあるべし」とも。
 そんな彼のエッセイに愛猫コガネに関する書き物があり、そこに面白い記述が。氏は予め「コガネはどこにでもいる普通の牝猫」だとしながらも、しかし彼女がどんだけ利口でどんだけ可愛いかを書いています。可笑しいのはガールフレンドたちが時折「コガネと私とどっちが可愛い?」と尋ねることに激怒されている部分。 
 女の私が読んでも"こんなコト尋ねる女も女やなぁ"とは思いますが、伊丹氏に至ってはもうボロクソのケチョンケチョンです。「〜きみたちなどコガネの100分の1も可愛くないのであって、もしコガネの半分でも可愛い女がいたら、私はすべてを投げうって顧みないだろうと思うのである」だってさ‥これはちょっと‥ペットばか。
オマケ(ちょっとした蘊蓄!)松岡正剛の千夜千冊『女たちよ!」