T.ギリアムの描くディストピア/12モンキーズ


 初めて『未来世紀ブラジル』を観たとき、あまりの恐ろしさに寒気がしました。 
 些細な偶然で平凡な暮らしが奪われることもですが、そんな不条理が許される社会、そして残酷な体制側の暴力‥カフカの小説のような理不尽さ‥ そんな社会制度でもパーティ気分で暮らす人民の無関心。
 この『12モンキーズ』は「人類を絶滅から救う」というテーマ、オプティミスティックなトーンとSFチックな面白さで『ブラジル』よりは観やすい内容になっていますが、しかし、実際にはペシミスティックな内容のように感じます。 
 ブラッド・ピットの怪演でギャグっぽく色づけされていますが、精神病院に於ける非人道的な患者への扱いや、そして、動物実験の実態は現実のもの。

 また、これは幸い「現実」ではありませんが、近未来社会の全体主義的管理社会のようすはまさにディストピア、『ブラジル』と似た演出がその恐ろしさをインクリースさせています。

 ちなみにオープニングに使われている&主にB.ピットのクレイジーなシーンで流れる曲はアストル・ピアソラの‥確か「Punta del Estes」という曲なのですが、よくぞ!というくらいピッタリです。