コンプレックスな選良意識

 さてこの映画に出てくる貴族やその同族が戦争中「ノブリス・オブリージ*1」という発想でロクな事をしないのだが、それを観ていてファシズムの根底にあったのもやはり一種の「ノブリス・オブリージ」であったと考えた。ファシストの目的は自ら自身を絶対的存在とする事にあるし、そして支持者が増加する事で国家は全体主義的構造を持つようになり権力者は「選良」となり支持者もまたその一端となる事に喜びを感じる。そうなった段階で権力者=しかし所詮は私利私欲が行動原理にある、は自家撞着に陥る。何故なら事の発端が私利私欲であるから。そして支持者全体の意志的賛同に満足を与えなくては自分のレゾンデトールが危うくなる事に気付き巧妙に「仮想敵」を造り出すようになる。まさにファシストは支持者への「ノブリス・オブリージ」を感じているという事だ。これはナチスが仕切っていた当時のドイツを書いている、しかしアメリカはその建国からしてまさに同じような思想体系でここ迄来ているのだから恐ろしい。ここでアメリカがナチスより悪質なのは「先ず帝国主義ありき」で建造された国家である事だ。だからアフリカの人々を奴隷として安く買ってこよう‥的な人権蹂躙もた易く行われた。ナチスドイツで殺されたユダヤ人とアメリカに奴隷として買われてきたアフリカ人の苦痛は等しくないかも知れないが、しかし人権蹂躙という意味では等しいだろう。

*1:身分に伴う義務という意味