NAZISの誘惑

 昨日WOWOWで『帰ってきたヒトラー』という映画(右画像)を観たのですが、この原作が'14にヒットし'15に映画化された事(それもドイツで!!)を全く知りませんでした…同じものを繰り返して読んだり観たりしているとこういう弊害も…って別に新しい情報を追いかける用事もないのですが。
 面白い映画でしたが残念なのは吹き替えだったトコかな?って別にわたしがドイツ語に堪能なワケでは全くありませんが、多分これは字幕で観た方が(というかドイツ語で観た方が)さまざまなリアリティが違ったと思います。

 しかしこんな小説なり映画なりがドイツで生まれたというのはかの国の成熟を感じるというか"NAZIS=第三帝国はなかったこと"というスタンスからの脱却もあっていいのでは?同じく第二次大戦中枢軸側であった日本は"大日本帝國の時代"をなかった事にはしていない。敗戦と終戦の違いとかはあれ。
 それ所か学生服でたまにある詰襟というのは当時の海軍デザイン。いいじゃん!
…というかナチス・第三帝国は芸術的だった部分もあり、映像監督のレニ・リーフェンシュタールは戦後もフォトグラファーとして名声が高かったですし宣伝相のゲッベルスも恐ろしく才能がありました(敗戦時自害)。この映画でもTVプロデューサーのカッチャ女史をヒトラーが"まるでレニのようだ…"と感じたり友人からは「このゲッベルス!」と罵られたりが面白いけど、イマドキのドイツ人がレニやゲッベルスを知っているのかなとも。まぁ知ってるからこういう映画がヒットするのかな。
 軍服(制服)やインシグニア類の美しさも傑出しているのでマニアがいるし魅力がある。

 そこでまたS.キングの古い短編集なのですが『DifferentSeasons』というのの春が「刑務所のリタ・ヘイワース」(映画「ショーシャンクの空に」の原作)の次、希望の春に続き堕落の夏が「ゴールデン・ボーイ」。これで文庫1冊本(左画像)なのですけどこれがなかなか凄い話です。
 原題"Apt Pupil(優等生)"の通り健康で優等生だった少年が、これはナチスの芸術性ではなくその残虐性に引き込まれていく。たまたま近所にナチ戦犯の爺さん・ドゥサンダーがいるのを発見し…相互依存に陥っていくわけなのですが割と壮絶な堕落へと…最後モサドが出てきたりして…
 アメリカのKKKであるとか人種差別の人達がNAZISのインシグニアを好んで使っているけど、そういう人達は第二次大戦で負けていたら?という想像力がないのでしょうかかと言ってP.K.ディックの『高い塔の男』はどうかと思うケド

 ちなみにこの『DifferentSeasons』の秋が所謂「スタンド・バイ・ミー」なのですが原題は「The Body(死体)」でこれは無垢からの脱落と訳していいのか"Fall from innoscent"だったかな?秋(Fall)とかけてる。そして冬が「マンハッタンの奇談クラブ」で冬の物語。これで文庫1冊本。
 希望の春からだんだん話が希望のない話になっていくのですが、冬はちょっと明るいオチも。それにしてもこの『DifferentSeasons』を『恐怖の四季』と訳すのは如何なものかと。別に恐怖というかホラーじゃない。
 キング好きの村上春樹は「Uneasy(落ち着かない?)な気分にさせる」とどこかで書いていましたが言い得て妙かと。ただ『シャイニング』だけはそれだけじゃない、本当に怖い。