13.ヘヘ、何だその喋り方

 どういう風の吹き回しか林爺さんの家の窓から辺りを見回しては偉そうにしているマルだが、どの道また追い出されるに決まっている。無駄な喧嘩をするのが趣味だからだ。
「だからと言って何なんだ、ジョルジュ。お前こそえらく上品ぶってるな?僕ってか!」
 姉貴の集合住宅のパーキングにやって来たマルは、バッキーが来ないか待っている。ヤツと喧嘩をする為なのだが、実際の所マルはバッキーを虐めているだけのようでもある。バッキーは実の所鈍い。
「何の話だ」
「そこの1階に拾われてきたフワフワに熱中してんじゃないのか?」
 熱中はしていないが‥綺麗だし‥そうだ!
「マル君、かの女の飼い主がわからないかなぁ?攫われてここにいるらしい。ここではミユと呼ばれているが、元々は映画や音楽が好きなオーナーの所でライザという名でいたらしい。君なら世間を知ってるだろう」
「知らないね。つか嘘なんじゃねえの?ミユを飼っている家の奴等がそもそも怪しいからな」
「柴犬のミクの事か?」
 マルの話によると柴犬のミクもどこからか貰って来られ、狭い庭で飼われ、年をとったからどこかにやられたそうだ。俺の姉貴もその犬を可愛がっていたらしい話は聞いたがそうなるとライザも危ないかも知れない。