ロシアン・スタイル/解り合える言語

 今日、小学校の時からの親友pontueと久し振りに(彼女は多忙)会って洋食屋で昼御飯。彼女は行く先々でまぁいろいろ工夫(わたしの目には要らざる苦労)をする人。土佐清水にいた時(生粋の神戸っ子の彼女がそういう遠方に赴くには理由があるのですが)宅配弁当屋を営んでみたり(その時NHKのマイレシピ選手権みたいなので優勝しかかった時、その段階で彼女が「うちのお弁当屋でも好評です」と言った所「あ、プロはダメ」と除外された。最近何か「ヤラセ」とかで糾弾されていたけれどNHKもヘンな所で厳格?)神戸に帰って来てからは稼がないといけない(旦那+息子2名が稼がないから)というので職歴がない、じゃあというので介護職の免許を取って就職した特養でリーダーになってみたり。その傍らわたしが父親に死なれてメソメソしていると「あんたが泣いてたら他の人が泣かれへんで!」と檄を飛ばしに来てくれたりそのわりとスグに彼女の父親がこれも癌で急逝した後は実家のきりもり。この実家というのが入院施設まである外科医院なのだけどそこを継ぐ為に京大に行った兄と良く解らない理由で実家にいる子連れの妹とかこれまた難物の御母堂とかがメンバーだったりする。長い付き合いなので実際に何度も会っているし御母堂からは結構ヘンな事も言われたから知っているのだけどそれをして彼女は「変わってるやろ?」。
 そんな大物の彼女に今日「暑いしここはパッとロシアにでも行きたいな」と言うと「ロシア?あんた猫がおるねんし高野山にしときいや」。

 で、ロシアといえばでいろいろ話して(大それた政治談議では勿論ない)笑ってたりしたのだけどその面白さの一旦が解り易いのがこの左画像。
 「テロリストが何故ロシア人を誘拐しないのか不思議におもいませんか?」…ここで「ロシア人なんか誘拐しても取れるものが大してないから」は早計で、この文章はこう続く。

86'ベイルートでヒズボラがソ連外交官4名を誘拐し自分とこの戦力支援してくれと要求。勿論モスクワ側は無視。するとヒズボラは本気を見せる為、誘拐したソ連外交官を1名を殺害してみせる。それに対するモスクワ側の答えは‥
 KGBがヒズボラ幹部の家族を誘拐してカストレート(上品なわたしは訳語を書かずにおく)して殺しその死体の一部を「多分他の家族も同じ運命よ?」というメモと共にヒズボラ幹部に送りつけた。そしてその後ソ連外交官メンバーは素早く釈放された。

 悪趣味な冗談のような話ではあるけど、これは実話(ただし'85)。時代はゴルバチョフがグラスノスチで頑張っている時代なのだけど、あれもわたしレベルの人間の目には纏まらないソ連(何故なら好き勝手言う人多すぎ)が厄介なので纏めようかという事業に取り掛かっている時です。ゴルビー!と人気になったりしたけど彼の選挙戦で推薦演説をしたグロムイコは「彼の笑顔は素晴らしい!そして鉄の歯をもっている!」と傍目には推薦なんだか何だかよく解らない事を言っていたのだけれどしかしこれが推薦たりえるのがソ連。当時はエリツィンも御健在だわアメリカはというとレーガン(大のソ連嫌い)の時代。推して知るべしですよね‥

 KGBというのもプーチンがKGB出身というので一種メジャー(?)になりましたが、かねてより『映画007シリーズ』で出て来る悪役にソ連なりロシアのスパイが多いのはまぁKGBという事であって美人だったり変な科学者や天才事業家だったりするのは当然というかKGBではそういう風に人選したり教育したりする…って荒唐無稽な話のようですが、まぁ実際そう(KGB創立者が元貴族だというので納得)その辺が一番よく見える『007』は『美しき獲物たち』…って娯楽映画で例えてはいよいよ信憑性がなくなってしまうかも?でもあれはソ連なりロシアの訳のわからなさを物凄く上手く描いているというか悪役にクリストファー・ウォーケンを持ってきたのも上手かったと思います。

 だいたい当初プーチンの政敵だの都合の悪い事を探るジャーナリストが実に奇妙な死に方をしている段階で「プーチン怖〜」「KGB出身やってよ」とリアルで見えるその以前から「奇妙な死に方」はロシアの一種お家芸であってゴルバチョフとて世界にニコニコしつつ割とやる事はやっている。その辺というかロシアンスタイルで解り易いのは'02のモスクワ劇場占拠事件かと‥スペツナズが解決したというか人質も巻き添えにしたというので批判の声があったりしましたが、チェチェンの解らないでもないけど実質的にはわりとどうでもいいテロリストなどさっさと片付けよう。これが画像にある文章にも繋がるのですが、ロシアの様式だと思えば外部から人質の人権がーとかそこを批判するのはお門違いだと思うところです。

 これ即ち国際社会であったり政治であったりの世界で「我々はこういう者である」というマニフェストをするに於いてポリティカルな主張をする以前に「共通の言語(テロにはテロ)」で対話しようという姿勢を示していると思えば実にプラクティカルなのではないでしょうか?だいたいこの画像でも何かしたのはKGBという書き方がされているしスペツナズがやった事で批判されても「あれはねーそういう先走りする組織があるのでうちとしてもなんともはや」というスタンスが国家としてはとれる形になっている。こんな面白いスタンスが通用してしまうのがまぁソ連ロシアという事で。こうなってくるといくら物分りの悪いテロリストでも状況を理解出来ますよね(それに比べて我が国は‥とも思わない。謎めいた内輪もめが日本のお家芸である事からして)。

 かたやわたし程度の卑近な例としては勤務先の上司から資金繰にグチったりされると「では当面いくらあれば?」。これは先ずそこで止まってしまうと業務が進行しないというわたしの都合であって、冗談でたまに「なざ美金融が御貸ししまっせートイチの金利やけど」とか言うのを本当にアテにしてくるビックリがあったりもするのですがそこで貸したお金がどう帰ってくるかを確認すると「そんなん一緒に働いていたらわかるやろ」。一緒に働いているからこそ資金ショートしがちなその運営を今一度確認するのは当然の話。実はこの上司とわたしの間には事務所の賃貸関係があったりでこちらの不動産状況を「凄いお父さんやな、こんだけの財産残して」とか言うけど不動産がメインでありよってそこに伴う固定資産税を解っていない。でもわたしは面倒くさがりなので今でも上司の孫自慢や「フェイスブック始めた」みたいな話にリアクションをしたり一緒に仕事をたまにしたりしていますつか基本仲良し。面倒くさがり?いや特定の状況ではちょっと動く事でより一層の面倒が回避されるということだと。

 話が逸れましたが、そういう所がロシアの面白い所…プーチンとオバマが朝食を採っているニュース映像が多分今でもYouTubeに残っていると思いますが爆笑もの、もとい味わい深い。
 日本とではこと動物好きのわたしとして注目だったのが秋田市長とのペット交換のインシデント。猫好き秋田市長は喜んで「ミール(ロシア語で平和の意)と名付けました」とハシャイでいましたがこちらから贈った秋田犬に関する続報は‥プーチンは黒ラブ(Labrador)を溺愛していて職場やパーティの場でも好き勝手させてニコニコなのですが、自らちょっと困った野生のシベリア虎や熊を躾ける御仁。これは実際の所彼が基本的にリアル動物好きだから為せる技(KGB出身だからではない)なのですが‥とりあえずそれよりちょっと前に東欧のどっかから犬を贈られていて、その犬とその秋田犬と一緒に楽しそうに雪遊びしている報道は、あった。あったけれども「プレゼントされた犬、大事(?)にしてるよ」は伝わるけれども黒ラブとの報道にあるような何というかインティメイトな感じとはやはりちょっと違う。

 だからその点ではわたしも愛猫ジョルジュを好き勝手させてニコニコ…ってそれは躾けていないというか無政府状態なだけであって全く次元の違うニコニコ、ここでプーチンさんってイイ人一緒じゃんと思う程には迂闊ではないというか?ってわたしがプーチンさんを警戒する必然性は一切ないというかしたらそれは自意識過剰も甚だしいというかちょっとロシアより先に考えるべき事かも‥

 ところでゴルバチョフが当初プーチンに対して肯定的だったのが後々その独裁的スタンスに対して批判的になったりしているのですが、ゴルバチョフがプーチンを批判してもなぁっていうかやはりそれを華麗にスルーするのがやはりプーチン。
 これぞロシアンスタイル。忙しい時にややこしい事ふっかけられても無視、それでも煩かったらそれなりの対処を素早くとる。でもゴルバチョフにせよプーチンにせよ有名人(政治オンチのわたしとしてはこの程度の認識)だから面倒な事はしない。
 合理主義をモットーとするアメリカよりもっと合理的。それがロシアンスタイルだと思います。