黒い自転車

おそろしくイイカゲンで そして失礼な
あなたはもう美しくすらない
でも美しかったころ、わたしに自転車をくれたね
自転車はあなたと同じくらいイイカゲンなしろものだったから
翌日公園で黒く塗った

もう何十年も逢っていなかったあなたの誘いで飲みに行った時
「この時のこと覚えてる?」と
あなたも、そしてわたしも多分美しかった頃の写真を見せられて
あなたが未だ
その頃のことを覚えているのが哀れだった
あなたはもう美しくないし わたしだって変っているのに
そして黒く塗った自転車だって
とっくにチェーンがはずれてしまっているのに

もうわたしとあなたは 地球の端と端くらい
離れてしまっている