ストーカーのいろいろ・曖昧編 トル君3

 とりあえず私の通っていた大阪デザイナー学院とヤツの通ってた辻調は地理的にも近かったしよく遊びに来た。特に私の仲間は紆余曲折を経てココに来た系の人が多く、皆様年上だったんでトル君はちょっとしたペット扱いで本人もまんざらではない様子っつーか増長しつつあったある日「アッタさんトコ、メンズもやってる*1から見に来たらって誘われた」と言う。アッタは私とカクと3人スゴく仲よかったんで忌憚なく真偽を問うと「こないだSが休んだ日にカクと学食にいおったらあの子来たしウチ親の店の話したけど誘ってナイよ!」と言い「まともな店だし来なくていいって」とダメ押し。
 で、トル君に私は「アッタさんち行ってもイイけど、でその前に頭剃って坊主になる事な。」と提案。「坊主って何で?」...ってそれでもアッタんとこ行く気!?モードのヤツに私は人魚姫の話をしてやった...人間の王子様に近付く為に必要な足を得る為に人魚姫は声を犠牲にしたし「トル君もさー、アッタさんと親しくなりたいなら何かを犠牲にしないとさ。」と言うと「俺はそんなつもりじゃないよ!でもクミが言うなら俺はスキンヘッドになってやるさ!」となんかすごく違う話になってヤツはその翌日の夕刻、ツルツルの頭でウチに来、ドアを開けたウチ母に「A君どうしたんその頭!」と笑われつつ「丁度ご飯だし食べない?」と言われると素直にダイニングテーブルに*2。そして「A君は辻で料理の勉強してるんでしょ、自信ナイわぁ〜」とか言いつつ母親は大ハシャギってか母親は料理上手いというか味が解ってるから自信満々だしトル君がまた褒める、すると「コレも...」とかいろいろ冷蔵庫で眠ってた系の物迄出すしでヤツはご飯3膳食って「ホントお母さん料理上手いですね、今度ボクの作ったドルチェ持って来ていいですか?」。ドルチェ?...って母親にトル君は「ああ、イタリア語でデザートの事ですよ」と、もともと童顔にツルツル頭でそこらの中坊が罰ゲームにあってる風のくせスカシて言ったのが彼女にはウケてた。
 そしてトル君は2日くらい後、私のいない時にウチ母親にみすぼらしいタッパーに入った、しかし「コレちゃんとした箱に入ってたら高いよ」みたいなものすごく凝ったチョコレートのケーキ、今でいうなら装飾つきザッハトルテみたいなの、それもめっちゃウマいの持って来た。どう考えてもヤツが作ったと思えないしコツを尋ねる手紙を出す*3と「シロウトとはチョコレートベースから違うんだよ!俺はちゃんとヴァン・ホーテンのココア粉から仕込んでる。でもクミがそれ解ってくれて嬉しいよ、やったー!俺はこれで人魚姫だぜ!チクショー!まいったか!」という返事が能登半島の絵葉書で帰って来た。勿論、写真が能登半島のであるだけで消印は2駅向こうのヤツ住所のものだ。芦屋南。

*1:彼女=アッタんちは大きいブティックをやってた

*2:実は窪塚(ソレもスキンヘッドで)出て来た時私より先に母親が「この子A君と似てるね」と言ったくらい母親はミーハーだし若い客好きだ

*3:とにかく私とヤツは手紙でのやりとりが「普通」だった。ちなみにソレは筆まめとかってのとは違う世界