僕はジョルジュ、姉さんはコートを着ている

 僕は猫だけどジョルジュっていう名前でね。子猫の頃、なんだか訳もわからず母さんの所から兄弟でひきはなされいつの間にか姉さんと暮らす事になった。姉さんたってよく解らない。人間だって事は確かだけど、母さんが言ってたようにはそんな悪いやつじゃない。
 ジョルジュっていう名前は「バカバカしい」からつけられたらしいけど、なんでも偉いフランス哲学者の名前らしく姉さんは他人に僕を紹介する時にはそう言っているし、いつの間にか居なくなってしまった彼女の父親によればイタリアのデザイナーのジョルジュらしかったけど強ちバカバカしい名前でもないのかな。
 まぁどの道名前なんてどうでもいいんじゃないか?ただ姉さんが僕を呼ぶその響きだけ。

 それはいいんだけど、姉さんには人間の妹がいて、コイツが厄介。奴は姉さんを嫌っているのか、それとも僕が姉さんしか好きじゃないからかな?僕と姉さんが楽しくしていると、矢鱈邪魔をする。たまに朝寝坊の姉さんを起こしても起きない時とかご飯をくれるんだけど、何て言うのかな、杜撰で美味しくないんだ。

 何より僕が散歩に行くのが気に食わない様子。姉さんは好きなように出してくれるんだけど「ドア開けっぱなしで寒い!」というのが奴の言い分、何のことはない、奴の部屋には電気ストーブがあって熱いくらいだ。そのくせ僕と姉さんが居間でガスヒーターで温もりながら映画を観ていると「ドア開けるから寒いんじゃないの?ガス代が勿体ない」だって。
 僕は寧ろガスヒーターがあんまり好きじゃないからどうでもいいけど、姉さんはそんな妹に気を遣って家の中でもコートを着ている。