激写、猫のレクリエーション


 わたしが家に帰る。
 すると、普段なら部屋の中から玄関まで飛び出してくるジョルジュなのに今日はその歓迎セレモニーがなかった。

 いつもならそんなケナゲなかれを抱き、先ず台所をチェックするのだが‥ とりあえず両親に挨拶をしてわたしの部屋に向かう。ジョルジュはそこを自分の部屋と認識しているから、いるとしたらそこだ。

 部屋に近づくと小さい音が聞えてきた‥ 微かなものおと。
 途切れの悪い吐息のようなそれ。 少し開けてあるドアの隙間から中を覗くと、ジョルジュが布団のうえで体をよじっている。 そして吐息のようなものおとはかれの動きに連動している。
 いや、寧ろかれの吐息は鼻息で、かつ、僅かな上下運動のあるその音は、なにか音楽のていを示している。
 
 コイツ!
 鼻歌を歌っている! そしてそれにあわせて体を回転させている!
 
 携帯のカメラ機能を起動させながらわたしはかれの微かながら確かに一定のメロディを感じさせる鼻歌(鼻息)に耳をすませる‥ 
 するとそれはどうやらシャ乱Qの"ズルい女"のようだったが、聞くひとが聞けばもっとアブストラクトな、メロディと感じられたかもしれない。

 そして素早く部屋に飛び込んだわたしが撮った写真がこれだ(右画像)。
 シャッター音にギョッ!とした様子でジョルジュはこっちを見たが、すぐになにもなかったようすでわたしに飛び掛ってきた。