夜の海で

どこかへ行こうとフェリーに乗った
あなたとわたしは
思ったよりひんやりとした 夏の夜風が嬉しくて
デッキから遠ざかっていく地上の灯りを見ていた

誰もが恋したいってコランは言ったね、と
あなたは古いフランスの小説の一節を口にする
泡沫の日々だっけ?
わたしはよく覚えてなくて薄笑いするしかない

わたしも恋がしたいな、と
髪を揺すったその香り
その甘さに空を見上げると半月が
あなたの胸のように丸くて
同じよう クリーム色のワンピースを着た
あなたの腕をそっと触れた
わたしには
それしか出来なかった