今年初めての船着場


 古い恋人の家に泊まった夢をみた。
 彼は既婚者だったので目覚めると当然のよう奥さんがおり、私は眠いのを我慢して早々に外に出たのだけれどそこは当然のように見知らぬ町。

 だいたい私はその恋人の家に泊まったことなんて一度しかない‥

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 町外れにある駅からはボロい遊園地にあるようなオモチャくさい電車しか出ていないみたい。
 それも、私の到着を待っていたかのよう、そして置き去りにすることを主眼として待っていたかのよう、私の目の前、出発してしまった。

 当惑していると、今、まさに目の前を過ぎて行った列車(オモチャのような)の乗客が脇の車線を指し「それに乗ればいい」「教えてやったわしに感謝しろ」とのこと。


 車線を見ると客室のない、まるでスノーボードのようなものが7輌連なっている。
 スピード恐怖症の私。
 こんなものにつかまって電車並みのスピードに耐えられるだろうか‥と、思ううちにそのボードは走り出した。

 山沿いの線路は、南海高野線のよう。
 がけっぷちを、しかし南海線とは違い恐ろしいスピードで駆け抜けていく。

 "ああ、きっとこの先にはあの『船着場』があるだろう"
 そんな私の予感通り、山間部の崖っぷちと思われた線路は薄曇りの空の下、灰色の海の傍を走り始める。
 何度も夢で見たそこ‥なんだけど、眠りの中の私は『完璧に本当のこと』だと思っている、それも何時ものことなのだけど。本当に本気で。

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 今朝の私が、しかし、何時もと違ったのは『船着場』にある土産物屋の中を息苦しく歩くのではなくボードに乗って走り抜けたこと。
 その船着場小市場から続くアーケードも、そして線路より内陸側にあるいんちき臭い、でも高級そうな住宅街も。そしてそのまま走り続けるボードのスピードに戦いて目を覚ますとジョルジュ君がやはり私の胸の上で寝ていた。