サンプル作り

 対象が何であれ『モノ作り』というのは基本的に忍耐を要するものです。カッコよく言うとヒラメキが生まれる時点というのがアル、必ずアル!と信じてその瞬間を待つしかない部分があるのですが、まぁ芸術家ジャナイ私にそういう贅沢は許される筈はありません。よってとにかく何でもイイから手を動かしていないといけないわけです。スケッチするなりソレをもう少し具体的なデザイン画にするなり‥してるウチにまぁなんとなく自分が作ろうと思っているものが見えてくる。さて、ではそろそろ、ってここら辺りからパーツや具材を集めて自分で作るなりムリなものは仕入れ先にサンプル発注するなり、です。実のところ私がココに来た当初は全デザイン、仕入れ先に作ってもらっていたものです。しかしその方法がオソロシク精神衛生上ヨクナイ事に気付くのにそう時間はかかりませんでした。何せ思った通りのサンプルが上がってこないのに加え、修正してもらうのにまた時間がかかり〆キリ前にはもう胃に穴が開きそう。いや、開いてたかも、です。そんなある日の事、撮影直前になってお客様から「これ組み替えて貰えませんか?」(勿論こんなヤサシイ物言いではナイんですが)とのリクエスト。ブツは中国産のかなり複雑なビーズ+スパンコールの組み物アクセサリー、その上に中国工場に依頼したら絶対撮影に間に合わないという大ピンチ!そこで私と部長が茫然としているとそのお客様は「コレくらいSさん出来るでしょう?」と、明らかにイジワルな口調で。私としては「そうですね、ソレでいいなら週明けにお届けしますよ。」と言う以外にナイ状況!
 ‥それ以降、自分でサンプルを作るようになりました。勿論、その組み物アクセサリーの組み直しが思ったよりカンタンで撮影にも採用されたからです。そしてその後、その超弩級にイジワルなお客様とはかなり熾烈な応酬が繰り返される事となったのですが、まぁ仕事なワケで今では「正直でイイ人やん」とすら。実際そうです。